忍者ブログ

馬と狸と猿と駄の話

将軍04.わが眠りに報いよ。

自動車免許を取得していない時期の話。

「八柱霊園に探検にいきましょう」

「電車で行って、ファミレスで夜中まで時間つぶす?」

「いえ、自転車で行きましょう」

「遠いじゃん。君のうちから、ぼくのうちまで一時間。うちから八柱まで一時間。片道二時間かかるんじゃないの」

「それくらい、大丈夫です。まあいちおう、わたしは体力には自信あるんですよ」

「それならいいけど」

-----

「もうすこしで正門に着くね。雰囲気出てきたね」

「うわっ!」

「びっくりした! どうしたの?」

「タイヤがパンクしました」

「げー、まじか。どうしよう?」

「ここまで来たから、探検して帰りましょう」

「ほいほい」

-----

「さて、帰るのはいいけど大変だよね。パンクタイヤ重いでしょう」

「ええ、なんとかがんばります」

「あれ、そっちは逆方向だよ?」

「いえ、こっちで大丈夫です。わたしは道にくわしいんですよ、異様に」

「いや、ぼくはここ地元みたいなものだから、わかる。方向ちがうよ」

「いえ、絶対に大丈夫です。こっちです」

「ちがうって。そっちは白井方面だよ。帰るの柏なんだから、逆だよ」

「いえ! 絶対に! 大丈夫ですから! わたしにまかせてください! パンクしてるんだから早く帰りたいんですよ!」

「そう……。そこまで言うならいいけど……」

-----

「将軍」

「……」

「ずっと君の後ついてきたけど、八柱出てから二時間たってるよ。ここどこ? 現在地わかってるの?」

「……」

「ねえ、聞こえてる?」

「はあ!? なにを言ってるんですかッ! わたしが道を知ってるわけないじゃないですかッ!」

「はあ?」

「……」

「それで、どうすんの」

「さあ! わたしは知りませんね!」

「ぼくが先導かわる。船取線さがすわ」

「はあ、そうですかッ! とっとと、そうしてくれればいいじゃないですかッ! わたしは疲れてるんですよ! もっと、わたしのことを考えてください!」

「へえ、そうなんだ。はい、これが船取線。なんだよ、ほとんど船橋に来ちゃってるじゃねーか。柏まで遠いけど我慢して」

「……」

さらに2時間後――

「とりあえず、うちに着いたわ。がんばって帰ってね。じゃあ」

「ちょっと、この自転車もってください」

「ん? いいけど、なに? ……あっ」

「あなたの自転車を借ります。わたしの自転車は、修理して届けてください」

「はあ!?」

「月曜日に使いますから、かならず明日中に届けてください。いいですね! それじゃ!」

「ふざけんな! 待てよ!」

-----

「聞いてくれよ」

「どうしたの」

「将軍、日曜日の夕方になっても自転車を取りに来なくてさ。電話しても、やつの親は寝てるからってつないでくれないしさ。自転車、修理して届けたよ」

「ほっとけばいいじゃん」

「ぼくも月曜日に自転車必要だったから、仕方なくだよ」

「ひどい話だな。パンク修理代のほかに、お金もらった?」

「いや、修理代も、まだ払ってもらってない。それどころか、あいつの家の自転車置き場に、

『寝てますから挨拶はいりません。勝手に帰ってください』

て張り紙してあったよ」

「……なんだよ、それ。お前、お人よしにもほどがあるぞ」

「うん、まあ、うん……」
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。