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馬と狸と猿と駄の話

将軍05.わが眠りに従え。

「飲み会は楽しいですね」

「あっ、そろそろ終電だ」

「はあ、そうですか。飲み足りないですね」

「将軍、相談なんだけど、家に泊めてくれない?」

「ええ、いいですよ」

「ありがとう、だったら、とことん飲もう」

「ええ、飲みましょう」

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「わたしは駅に自転車おいてるので、押しながら帰ります。家まで一時間かかるけど、いいですか」

「いいよー、いいよー、なんでもいいよー、ひっくー」

「わたしも、かなり酔ってるので足元があやしいです」

ガシャーン。

「将軍!」

ガシャーン。

「将軍!」

ガシャーン。

「ちょっと将軍!」

「まっすぐ歩けないです」

「ゆっくり行こう、あぶないから」

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「とか言ってたら、二時間かかったね。さすがに疲れた、もうだめだ、寝たい。部屋の隅でいいから」

「いまシャッター開けますから、まっててください」

「はあい」

ガラガラ……。

「入らないで、外で待っててください」

「え? はあい」

ガラガラ……。ピシャリ。

「……え? ……なんで締め出されてるの? 自転車どうするの?」

「帰ってください」

「は?」

「まあなんつったらいいんでしょ、わたしは眠いんですよ」

「は?」

「眠すぎて、あなたに迷惑かけると思うんですよ」

「は?」

「あなただって、ひとりで寝た方が絶対にいいと思うんですよ。どう考えても」

「……」

「ですから、自転車は貸してあげます。乗って帰ってください」

「……」

「帰った方が、絶対にいいです。ひとりのほうが、ぐっすり眠れるじゃないですか。わたしは、あなたのためを思って言ってるんです」

「……」

「どうするんですかッ! 自転車は貸してあげるって言ってるんです! わたしは眠いんですよ! はやく決めてください!」

「……帰るわ」

「ええ、それがあなたのためです。わたしの恩を忘れないでください。自転車はかならず今日のうちに返してください。わかりましたね」

「……」

「ああ、言い忘れました。わたしは寝てるので挨拶は、いりません。自転車はここに入れて帰ってください。じゃあ気をつけてください」

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「えっ、俺が先に帰ったあと、そんなことあったの。それで、お前どうしたの」

「自転車で帰って、起きて、また戻した」

「なにそれ! お前も、どうかしてるって。なんで、そんなにお人よしなの。自転車なんかほっときゃいいじゃん。それか、自転車は断って歩いて帰るべきだったろ」

「面目ない」

「将軍は頭おかしいな。気をつけたほうがいいよ」
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