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馬と狸と猿と駄の話

将軍07.命より眠り。

「まあなんつったらいいんでしょ、みなさん遺書を用意してください」

「は?」

「まあいちおう、わたしは昨日、12時間しか寝ていないんですよ。で、運転中いねむりするかもしれないんですよ。ですから、遺書の用意をお願いします」

「はあ」

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「まあなんつったらいいんでしょ、みなさん遺書を用意してください。わたしは昨日、9時間しか……」

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「まあなんつったらいいんでしょ、みなさん遺書を用意してください。わたしは昨日、11時間しか……」

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「まあなんつったらいいんでしょ、みなさん遺書を用意してください。わたしは昨日、8時間しか……」

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「まあなんつったらいいんでしょ、みなさん遺書を用意してください」

「なんだよ、会って一言目がそれかよ。また寝不足なの?」

「ええ、そうなんですよ。昨日は、12時間しか寝てないんですよ。で、今日は寝てようかと思ったんですけど来たんですよ。で、いねむり運転すると思いますので、みなさん遺書の用意をお願いします」

「12時間ねりゃ十分だよ」

「いえ、ちがいます。まあなんつったらいいんでしょ、わたしって15時間は寝ておかないと調子がわるくなる男なんですよ」

「しらんよ」

「〇さん遺書は書きましたか」

「さあ」

「△さんはどうですか」

「ふん」

「□さんはどうですか」

「はあ」

「≒さんはどうですか」

「ええ、まあ」

「あああ、ねむいです。みなさん、遺書は書きましたか」

「……」

「どうして書かないんですか。急いで書いてください。あああ、異様にねむいんですよ。どうして遊ぶ約束なんかしたんですかねえ。ああああ、ねむい。事故をおこしそうです。ああ、ああああ、ああああああああ、ああ、ねむいです。なんつったらいいんでしょ、今日は寝てた方がよかったですよ。遊ぶんじゃなかったですよ。ああああ、ああ、ああああ、ねむいです。はやく帰ってねたいんですよ。12時間じゃ全然たりないんですよ。どう考えても。ああああ、ねむい。遺書を書けた人から渡してください。はやくしてください。もう、ねそうですから。ああああ、ねむい、ねむい、ねむい。どうしてだれも遺書を書かないんですか。死ぬ覚悟ができてるんですね。ああああ、あああ、あああああ、ねむいねむいねむい」

「もういいよ、引き返そう」

「そうしようか、今日はお開きにするべ」

「えっ、いえ、大丈夫です」

「遠慮しなくていいよ、将軍は帰って寝たらいいじゃん」

「おれらは、せっかく集まったから飲もうよ」

「いいね、飲もうか」

「飲もう」

「飲もう」

「いえ、大丈夫だって言ってるじゃないですか」

「なに言ってるの。大丈夫じゃないから遺書が必要なんでしょ。おれら死ぬ覚悟なんかないんで、こんな車乗ってられないですよ。将軍は、ひとりで帰って、ひとりでゆっくり寝たらいいんじゃないかな?」 

「……」

「おっ、ちょうど赤信号だ。みんな、ここでおりるべ」

ブオオオオン

「ぎゃああ」

「うわあ」

「みんな大丈夫? 怪我ない? おりきってないのに急発進しやがったな」

「ドア開きっぱなしで発進するから、とっさに、ドアおもいきり蹴って閉めちゃった。おれ悪くないよね?」

「悪くない」

「悪くない」

「よくやった」
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